揺れる糸 【第四章】 真心を写す幻影
🕑 Added 2019-10-26 14:44:14 +0000 UTC
気が付けば由美は暗闇にいた。
辺りを見回すも、光、物は存在せず、寂しさや不安の気持ちに覆われていく。
少し肌寒く感じ、体を両手で摩る。そこで自分が衣類を身に着けていないことに気づいた。
誰かが近くに居るわけでもないが、無意識に胸と股を隠す。今まで何をしていたのか全く思い出せない。何より、自分自身に違和感がある。まるで、いつもの自分ではない気がした。
どうすることもできず、ただ周りを見渡していると、かすかに誰かの息遣いが聞こえてきた。誰かが居ることを期待して聞こえる方へ歩いていく。
少し進んだところで、遠くに何かがあるのが見え、足を速めた。次第に息遣いの音が大きくなっていく。
ベッドの上で誰かが横たわっている姿が見えてきた。体はタオルケットで隠れている。小さい子供くらいの大きさだ。
顔が見えたところで足を止めた。ベッドに横たわっている人は由美のよく知る人物だった。
「紗耶香?」
おかしい。紗耶香は自分と同い年だ。なのに、首から下のタオルケットに隠れた身体は子供のように小さく見える。
「はぁ…はぁ…由美…来てくれたの?」
紗耶香は顔を火照らせて辛そうな表情をしていた。
「身体がすごく熱いの、タオルとってくれない?」
由美は言われるがまま、紗耶香に覆いかぶさるタオルケットを摘まみ、剥がした。
紗耶香の身体を見て、目を見開く。
手足が無かった。
肩の付け根から先、脚の付け根から先が失われている。まるで、元から無かったかのように切り株はきれいな肌で覆われていた。視界から遮るものを失った股間は、お尻から女性器まで、すべてが丸見えだった。あられもない姿は見ている方が恥ずかしく感じてしまう。
「お願い、触って、自分で弄れないの」
紗耶香が切なそうな顔で、身体をよじる。呼吸をするたび、張りのある胸が上下に揺れる。
乳首は見てわかるほど固く尖らせ、陰部からは愛液を垂れ流している。
由美はあまりの光景に身動きが取れない。
「ねぇ、早く、あんまり焦らさないで」
紗耶香は息も絶え絶えにせがむ。
由美は考えるのをやめ、さらけ出された割れ目に手を触れた。
「んっ」
腹、鼠径部、陰部の順に指をゆっくり滑らせ、女性器の周りを人差し指と中指で挟む。腰がわずかに震える。
中指を愛液で濡れた膣にゆっくり挿入しては引き抜く。空いた手で胸を揉みしだきつつ、固く尖らせた乳首を弾いていじめる。紗耶香と長く付き合っていたこともあり、感じやすい部分は熟知している。
「ああっんっ」
紗耶香は汗ばんだ胴体をそらせて、快感を逃がそうとする。手足があったのなら、きっと由美に抱き着いていた。手足の無い身体では、不自由に身悶え、ただされるがまま、拒むこともできない。由美は今の姿の紗耶香を今まで以上に愛おしく感じていた。
由美自身も気持ちが昂り、愛液が太ももを伝っていくのを感じる。
瞼は弛み、口からだらしなくよだれが垂れている。薄く艶のある唇に意識が吸い込まれ、気が付けばお互いの舌をこすり合わせていた。紗耶香の心が流れ込み、満たされていく。
愛撫の手は少しずつ激しくなり、それに伴って、紗耶香も呼吸が荒くなっていた。
「はぁっはぁっんっ」
口を抑えることもできず、喘ぎ声が鼓膜を震わす。
「もう…ダメ…」
膣の中をかき回し、愛液を泡立たせる。ざらざらとした肉壁を思い切り擦り上げる。
「あっああ!いっイクっ」
身体がわずかに痙攣する。少しずつ、呼吸が穏やかになる。
「はぁ…はぁ…」
「気持ちよかった?」
「うん、すごく良かったよ」
「そう、よかっ…」
由美は紗耶香から離れようとしたとき、両手が引っ張られる感覚を感じた。
「なにこれ…」
由美の両手は紗耶香の身体に埋まっていた。
引き抜こうとしても、まるで接着剤でくっついているようにびくともしない。
「由美の綺麗な手、ちょうだい」
埋まった両手は紗耶香の中に引き込まれていく。
「紗耶香、やめて、お願い」
二の腕まで飲み込まれ、突然離された。勢いあまって仰向けに倒れる。
「ありがとう、由美からもらった手、大事にするね」
失われていたはずの両腕が生えている。
由美は手を付いて起き上がろうとするが、うまくいかず狼狽する。
まさかと思い、自分の身体を見ると、両腕とも肩から先が無くなっていた。
突然視界が明るくなり、由美は飛び起きた。
「ゆ、夢?」
そこはいつもの自分の部屋だった。
だいぶ汗をかいたようで、寝間着がべったりと肌に張り付いている。
手足を失った紗耶香に欲情した自分に戸惑い、背徳感を感じた。きっと、夢に出た紗耶香は自分自身。たぶん、心のどこかで、あの姿になることを望んでいる。両腕を失ったあの事件日のことを思い返しても、ほとんど悲しみを感じていなかった。今ある両脚だって、いつ失うかわからないのに、不思議と恐怖心が無い。だらりと垂れさがっている袖を見て、紗耶香や綾に申し訳ない気持ちがあるのと同時に、自分自身に対する未知の欲が精神を蝕んでいく感覚を覚えた。