太る可能性が100%と判定された女子高生の話(3)
🕑 Added 2022-11-22 13:38:32 +0000 UTC
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私はあの建物に入り、そして白衣の男性に話しかける。
「全然痩せなかったですよ!どこが痩せる可能性100%なんですか!」
普段とはかなり違うトーンで、声を張り上げるように言ってみた。
「ちょっと!落ち着いてください!」
流石にこの人も狼狽した感じになっている。いきなりだからびっくりしたのかも。
「は、はい……」
私も一旦冷静になろうとしてみる。
……大きな声を出すのは性格に合わないかも。
「まず知っていただきたい点ですが、『痩せる可能性100%』という表記をするぐらいですから、我々は自らの技術に自信があります」
「でも全然……痩せてませんよ……?」
威勢のいい言葉だけど私は痩せるどころかすごく太っている。
100%と断言する割に真逆の結果になった。
「それで、お客様も痩せた時期があったはずなのですが……」
「痩せた時期……?」
そんな期間あったっけ。
確か8月は太る一方で全然痩せてなんかいない。
体重計はあんまり乗ってなかったけど痩せたことなんて無かったと思う。
だったら7月……?
あの頃は体重計に小まめに乗っていた気がする。
確か……7月上旬は一番軽かったころで65kg。
そこからはひたすら増え続けてるけど。
……そういや7月の初めごろは68kgだったよね。
確かに3kg位は減った時期もあったってこと……?
「言われてみたら、7月の初め頃に……3kg痩せた時期があったような……」
私がそう言った瞬間、男の人は口を大きく開いた。
「それです!あの機械はとても高精度ですから、少し痩せることも予測できるんですよ」
「アリですか……!?そんなの……!」
この人の言っていることは間違ってると思う。
そんなの痩せた内に入らない。しかもその後20kg近く太ってるし。
「そもそも高精度だったら、どれ位痩せるか、いつ痩せるかぐらい分からないんですか?」
私がそう質問すると、この人は考えているような仕草をしてから何か言いだした。
「現時点ではどれ位体重が変わるか、いつ変わるかを予測することは依然として難易度が高いです。
今後、関連会社の開発するエッジAIシステムや登場するであろうオングストローム単位の微細な製造プロセスを使用したシリコン……」
そして、急に専門用語で捲し立ててきた。
きっと私に反論させたくないんだと思う。
賢そうだし何か言っても言いくるめられるだけかな……
「……という訳で、現状ではそこまでの測定ができません。ご理解いただけましたでしょうか」
「はい……」
何と言うか、話を聞いてるのも疲れてきたからもう帰ろう。
どうせ何言っても太った事実に変わりはない。
「ただし、前回詳しく説明はしませんでしたが……特別にお教えします」
「えっ?」
急に白衣の男性が声を小さくしてそんな事を言ってきた。
何の話かな……?
「計測したデータによると、お客様の体重は今日あたりがピークでその後減少に転じる可能性が85%です」
「……そうですか」
本当なら嬉しい話だけど……こんなことを今更言われても全然信じられない。
そもそも最初から言ってくれたらいいのに。
「何で最初から……言わなかったんですか?」
「まだ試験中の技術でして……それでです」
「分かりました……」
これ以上言っても仕方ない。この人に勝つのは無理だと思う。
今日がピークで、明日から痩せる……頭の片隅ぐらいには置いておこうかな。
全く信用はできないけど、「これからも太り続けて100kgになります」と言われるよりは良い。
「じゃあ……失礼します」
「ありがとうございました」
私は建物から出て、全然モヤモヤが晴れないまま駅に向かう。
空を見上げると厚い雲に覆われていた。私も分厚い脂肪に……
夏って急に天気が変わることがあるから面倒だよね。
時刻表を見ると次の準急まで後3分ぐらい。
今から早歩きで行けば十分間に合う……いやこの身体だと無理かも。
こんなに暑いのにもっと暑苦しくなって、しかも間に合わないなら馬鹿みたいだよね。
だったら後で来る各駅停車に乗った方がいいかな。どうせ大して時間も変わらないし。
私はとぼとぼ歩いて東案下駅まで向かった。
駅に着いたけど、改札を通ってから階段を上らないといけない。
エスカレーター、今日は点検で止まってるから……
「(はぁ……はぁ……何で階段ぐらいでちょっと呼吸が乱れてるの……)」
階段を上る度に太もも同士が擦れるし、胸が動くのを邪魔してきて……
お腹も震えて何だか気分が憂鬱になる。
ホームまでやって来たら、準急のドアがちょうど閉まった。
ちょっと走ったら間に合ってたかな……はぁ……
別に急いでないからいいや……
『まもなく4番線に、京橋行き各駅停車が6両編成で参ります』
……もう来た。すぐ来て良かったよ。
さてと、席に座ろう。
あっ、あの場所開いてる。ちょっと狭いけどそこにしようっと。
「お邪魔します……」
小声で一声かけてから座っ……
……あれ、狭いなぁ。
お尻も上半身もスペースが足りなくて上手く座れない。
すると隣にいる女性と男性がスペースを開けようと少し違う方向に寄ってくれた。
でも……狭すぎたみたいで女性が立ってどこかに行ってしまって。
おかげで一気にスペースが開いて、窮屈だったのが楽になった。
……前までこれ位の隙間なら難なく座れてたのに。
すごく恥ずかしい。本当に痩せなきゃ電車でも迷惑をかけちゃうよ……
これからは真剣にダイエットしないと……
(続く)