一日児童体験会
🕑 Added 2022-04-29 22:00:00 +0000 UTC
レイカ視点
「レイカ様、あなたは一日児童体験会の児童役に選ばれました。5月5日の朝7時に、〇〇小学校の校門の前へ集合して下さい。
これは国が決めたものであり、逆らうことは出来ません。」
この支離滅裂なメールを受け取ったのは、ゴールデンウィークの直前の4月末であった。
レイカ「なんじゃこりゃ。」
このメールは下まで支離滅裂な文章がびっしりと書いてあり、迷惑メールにしては手の込んだ作りとなっていた。さらに本来なら迷惑メールは自動的にゴミ箱へと送られるように設定してあるはずなのに、何故かゴミ箱に送信されていなかった。さらに何故私の名前が書いてあるのだろうか。
私はこのメールに違和感を抱えながらも、ゴミ箱へとそのメールを移動した。
翌日私はいつものように会社に出勤すると、上司から「役員が呼んでいる」と言われた。私の会社は大企業であり、普段は役員なんか話すどころか見たこともない。そんな役員が私に何の用事だろうか。そう思いながら会議室に行った。
会議室には私と役員しか居なかった。よほどの用事らしい。役員はコホンと咳払いをする。
役員「急に呼び出されて驚いただろうが、お前を叱るとかクビにするとかそんな話ではない。」
役員「今日話したいのは、昨日送られた一日児童体験会のメールについてだ。」
レイカ「ええっ!? あっ…すみません…」
つい大声を出してしまった。まさか役員との話で昨日のふざけたメールが出るとは誰も思わないだろう。役員は話を続ける。
役員「無理もない。あんなこといきなり聞かされたら誰でもふざけていると思うだろう。」
役員「しかしあれは本当だ。」
レイカ「本当って…」
役員「メールに書いてあったこと全てだ。」
レイカ「嘘…」
それから役員は私にメールの内容を見ることと、指定された時刻に絶対に〇〇小学校の前に集合することを約束し、役員の話は終わった。私は会議が終わった後すぐにメールを復元して内容を確認する。
一日児童体験会は大人と子供の双方の気持ちを理解するために出来たものであり、毎年児童役を大人から、大人役を児童から選び、一日それぞれの生活を体験するもの。こどもの日は元々端午の節句という男の子の成長を祝う日であることから、大人役は満10歳の男子から選び、児童役はその対極にいる満25歳の女性から選ぶ。そして児童役と大人役は一日体を入れ替わり、心身ともにお互いの生活に浸かるらしい。
私がメールを要約するとこんな感じであった。
レイカ「何これ…」
まず役員の言う通りメールの全てが本当ならば、これは国が決めたものなのだろうか。いつそんなふざけた案が通ったのだろうか。そしてお互いの生活を体験と言うことは、私は一日男の子の生活を体験するのだろうか。そもそも入れ替わるとはどういうことなのか。
山のような疑問が出てくるが、それを教えてくれる人は居ない。すべてが謎に包まれて悶々とした気分の中、私はこどもの日を待った。
5月5日
私はあのメールのせいで何かをする気にも慣れず、だらだらと溜まった業務を消化しながらせっかくのゴールデンウィークを過ごした。
レイカ「5時… まだ日が昇ってないじゃん…」
そしてこどもの日、私は最悪の目覚めで起きた。時計を見るとまだ5時だが、ここで二度寝をしたら遅れるのは確実だろう。私は寝不足気味で行く支度を整えた。
〇〇小学校は私が通っていた地元の小学校だ。そのため支度を終わらせたら10分ほどで着くことが出来る。私が校門の前についたのは集合時刻の一時間半も前であった。ゴールデンウィークで大分暖かくなったが、まだ朝の風は冷える。私は眠気と寒さに耐えながら校門が開くのを待った。
一時間後ようやく黒服姿の男性が門を開けてくれ、私は懐かしの校舎に入ることが出来た。
黒服「レイカ様でよろしいでしょうか。」
レイカ「はい、間違いないです。」
黒服「では、私に付いて来て下さい。」
私は黒服の案内に従った。私がこの小学校を卒業してから十数年が経っているため、校舎の中は私の記憶とかなり変化していた。私が居た頃よりも校舎の中はきれいになったみたいだが、少子高齢化の影響で空き教室が目立つ。私は校舎を見ながら感傷に浸っていると、黒服が保健室前の廊下で止まった。
黒服「レイカ様。この保健室の中にお入り下さい。」
レイカ「はあ…」
私は黒服に言われるままに保健室のドアを開ける。そこには数名の監視カメラと黒服姿の屈強な男性、それに大きな機械があった。そして部屋の隅には一人だけ校帽を被った少年が居た。私が保健室に入り終わると黒服がドアを閉める。よほど公にしたくないみたいだ。
黒服「こちらが本日行われる一日児童体験会の、児童役のレイカ様、大人役のケイ様です。」
どうやらあの少年はケイという名前らしい。黒服が挨拶をするように私とケイ君を促す。この屈強な男性に囲まれた密室の中では、下手に逆らったら私の命はないだろう。私もケイ君も黙って歩いてお互い挨拶をした。
レイカ「初めまして。ケイ君。私はレイカ、会社員よ。」
ケイ「は… はじめまして… オレは〇〇小学校の四年生のっ… ケイです。」
レイカ「よろしくね。」
ケイ「よろしくおねがいします…」
ケイ君は私の挨拶にも最小限で返すのがやっとみたいだ。最初はこんな大勢の人数に囲まれているんだから当然この歳じゃ緊張するだろうと考えていたが、どうやら違ったらしい。ケイ君は私の顔のちょっと下をチラチラと見ては、股間を隠そうと挙動不審な動きをしている。
私はピンときてしまった。ケイ君は女の私に欲情しているんだな。
黒服「それでは説明に入らさせていただきます。まず…」
私とケイ君の挨拶が一通り終わったのを確認したのか、黒服は説明に入り始めた。と言ってもそれはメールの内容をそのまま呼んでいるだけであり、形式的なものなのだろうとはひと目で分かった。その間もケイ君はさっきと同じ動作を繰り返している。
もじもじとしたケイ君は私の視線に感づいて、小声ですいませんと言う。ケイ君の顔は垢抜けていない小学生の中でも芋っぽい部類に入り、今どき珍しい短パンから露出している日焼けした足には擦り傷がついてある。毎日男子としか遊んでいないのだろう。反対に私は大学生時代にモデルもやっていたこともあるため、容姿に関しては自信がある方だ。性に関する経験が乏しい小学生男子だったら、私の体でつい勃起してしまうのも納得だろう。
黒服「以上で説明を終わります。何かわからないことはありますか。」
ケイ「ううん。」
レイカ「無いです。」
黒服「ではこのカプセルの中にふたりとも入って下さい。」
保健室のスペースを半分ほどを占めていたこの機械は、とにかく今まで見たことのないような形状をしていた。ごく普通の公立小学校の小さな保健室の中に最先端であろう巨大な機械がある状況はとても奇妙であった。まず目につくのがSFでよく出てくるようなカプセル型のベッドだ。それが2つあり、間には無数のチューブが繋がれてある。この機械がこれほど巨大なのも主にこの巨大な二つのカプセルのせいだ。
レイカ「あの、この機械って何に使うんですか?」
黒服「この機械は二人を入れ替わるために使います。」
レイカ「入れ替わるって…」
ケイ「そうだよ! ちゃんとせつ明しろよ!」
まだ小学生のケイ君も、自分がただごとではない状況に巻き込まれているのは理解したらしい。私に続いて黒服に抗議する。
黒服「いいから入って下さい。質問時間はとったはずです。」
レイカ「きゃあ!」
ケイ「うわあっ!」
どうやらこの機械が「入れ替わり」をするものらしい。私は何が「入れ替わる」のか全くわからなかったが、私とケイ君は黒服から半ば強制的にこのカプセルの中に押し込まれた。カプセルの中のベッドは案外快適だったが、私の不安感は解消されないままだった。
黒服「これより、一日児童体験会をスタートします。」
レイカ「ちょ… ちょっとっ…」
そうこうしているうちに黒服がこの機械を作動させるボタンを押したみたいだ。私は慌てて止めようとしたがもう遅かった。全身麻酔を打たれたように途端に意識は消え去ってゆき、あまりの速さに私は最後まで言葉が言えなかった。そして私は意識を手放した…
狭くて細長いトンネルをくぐっているような感じがする…
やっと出口のようなものをくぐると、私がなにかに入り込んでいるような奇妙な感覚がする…
そういえば私、一日児童体験会とかいう変なイベントに巻き込まれて、それで謎の機械に男の子と入って、それで…
レイカ「んん… 変な感じ…」
ようやく意識がはっきりしてきた頃、やっとカプセルのドアが空いたみたいだ。長い間カプセルの中に居たせいで、暗闇に目が慣れてしまってなかなか周りが見えづらい。しかも何だか視界がいつもよりも低いような…
レイカ「眩し… あれ…」
何だこの声?
私の声はもっとハキハキとした声だったはずが、私の耳には声変わり前の子供っぽい甲高い声が聞こえる。しかも何だか声変わり前と言うよりもボーイソプラノに近い気がする。その声はまるでケイ君みたいだった。
黒服「レイカさんで間違いないでしょうか?」
レイカ「当たり前でしょ! それに何だか声がおかしい気がするんですけど。」
私の姿を何回も見たはずの黒服が、まるで私の身元を確認するかのような態度で接してくる。変なカプセルに閉じ込めておいてこの態度は挑発しているようにしか見えない。しかもあの機械のせいか知らないが、体の色々なところがおかしい感覚がある。
私の不満じみた声を察したのか、黒服は慌てて何かを取りに行った。しかし黒服が取ってきたのは鏡だった。流石にここまで煽られると腹が立ってくる。
レイカ「何で鏡なんか持ってきたの?」
黒服「御覧ください。今の貴方、レイカ様の姿です。」
最初、私はまだ眩しさで脳がやられているのかと思った。鏡に写った姿は私、『レイカ』の整った女性の顔とは全くと言っていいほど違ったのである。
顔の輪郭は真ん丸で顎が未発達なため、相対的に目が大きくなっている。整った鼻筋は短くなり、小さくぺちゃりとした子供のものとなっている。頬はぷっくりと膨らんでおり、ぽかんとした口からは歯の替え変わりのせいか犬歯が抜けている。
さらに背中まであったロングの茶髪は跡形もない。後頭部と側頭部の髪はばっさりと刈り込まれ、額と頭の真上の部分のみがちくちくとした短髪を感じる。スポーツ刈りと言うものだ。今まで感じたことのないスースーとした感じがこれは現実であると教えてくれた。さらに頭には捨てたはずの校帽を被り、顔には化粧の代わりに浅黒い日焼け跡とそばかすがついてある。
それは成人女性というよりも、わんぱくな少年の顔立ちであった。そして私はその顔立ちを私は知り、さっきから何回もその顔を見たりその顔と話したりしている。その顔はまさしく、ケイ君の顔立ちそっくりであった。
レイカ「な、何で!?」
私は慌てて下を見る。仕事用のスーツの代わりに半袖のTシャツを、いつもつけているブラの感触もなく、タイツの代わりに短い靴下を、買ったばかりの新品の革靴の代わりに踵を踏み潰した上履きを、黒いスカートの代わりに水色の短パンを、私が着ていた女性物の衣服は全てケイ君の男子用のそれへと変わっていた。
胸を触っても薄い胸版と肋骨の硬い感触しか無い。太腿も同様だ。触っている手の指も小さく丸っこくなっている。爪も短く横に広がっており、普段の遊びのせいで泥が爪の先にこびりついている。手の甲を見ると全体的に色濃くなっている。どうやら日焼けは全身に及んでいるらしい。
信じられないが、私はケイ君の体になっている。つまり私とケイ君は謎の機械により入れ替わってしまったのだ。
レイカ「ちょっと、何よこれ!」
黒服「何よこれ、と言われましても。一日児童体験会はケイ君のような男子の体を一日体験するために作られたものなので…」
まさか本当にケイ君の体になるなんて、私は我慢できずに立ち上がって黒服に抗議する。私よりもちょっと背が高いくらいの黒服は、ケイ君の体だとこっちが見上げないと視線が合わないほど身長差があり、黒服が子供と会話するように少しかがんでいるのが腹がたった。私の声も少し滑舌が悪い舌っ足らずな子供の声となり、黒服の飄々とした受け答えがさらに腹がたった。
ケイ「うおおおお! オレ、本当にレイカお姉さんの体になってる!」
黒服「どうやらあちら側は喜んでいるみたいですね。」
いつの間にかケイ君も目を覚ましたらしい。私とは反対に入れ替わった私の体を得たことを喜んでいるみたいだ。私が絶対に浮かべないような下品な表情で、胸や尻を触っては揉んだりしているその姿を見ると腹が立ってくる。
ケイ「スゲー、大人の女の人ってこんなパンツ履いてるんだ〜 チンコもねーじゃん!」
ちょっと待って…
レイカ「チンコも無いって…」
ケイ君は勿論男の子で、私とケイ君は入れ替わったっていうことだから…
当然男の人にはあるはずだから、今私は男の人の「それ」があるっていうこと…?
私は短パンを少し下ろすと、私の黒いショーツではなくて真っ白なブリーフパンツが見える。そしてそれを恐る恐る触ると…
レイカ「ある…」
ぷにぷにとした棒のような感触と、二つのコリコリとした硬いボールのような感触があった。そしてそれらが意味するものは、私に男の人のものがあるということであった。恐る恐るブリーフパンツの中を覗く。
そこには彼氏としたときに見せてもらったものより遥かに小さい、皮を被った小さなソーセージのようなものがあった。まだ周りの肌と同じ色をしていて、毛も一切生えていないツルツルのものだ。皮をめくろうとすると激しい痛みに襲われ、ピンク色の何かが見えるところまでが限界であった。
黒服「そろそろいいですか?」
レイカ「ひゃあっ!」
いきなり黒服に話しかけられて、私は本当の子供のような情けない声を出してしまった。
黒服「もうすぐ8時ですので、そろそろレイカ様とケイ様はそれぞれの場所へ移動してもらいます。」
レイカ「移動ってどこよ…」
いつの間にか時計は8時になっていた。同時にキーンコーンカーンコーンという間抜けなチャイムが鳴る。入れ替わりという出来事で忘れかけていたが、そういえばここは小学校の保健室であった。いつまでもここにいるわけにはいかないだろう。
黒服「レイカ様は4年2組の教室に行ってもらい、そこで丸一日授業を受けてもらいます。ケイ様はレイカ様の自宅で私と一緒に大人の仕事をしてもらいます。」
え? 私が4年2組で授業を受ける?
ケイ「やったー! オレ、オトナのシゴトができる!」
ケイ「でも、オトナのシゴトってなんだろう… オレやったことないからふあん…」
黒服「それは私がサポートしますので、仕事で困ることはありませんよ。」
ケイ「ならいいや!」
4年2組って多分だけど、ケイ君が普段いる小学校のクラスだよね… つまり、
レイカ「それって、私が小学校の授業を受けるということですか?」
確かにメールには一日児童として生活すると書いてあったが、流石に私が教室で授業を受けるはずがない。しかも今日は学校が休みなはずだ。しかし、黒服の発言はどう考えても私に小学校の授業を受けろというものだ。私は自分の思い違いだと期待して黒服の返事を待った。
黒服「はい。その通りです。この小学校だけ今日は平日なので、レイカ様はいつも通りの懐かしい小学校の雰囲気を体感できます。」
黒服「あと、ケイ様以外の生徒には一日児童体験会のことを伝えてないので、先生含めてクラスの人はレイカ様のことをケイ様としてしか見ていません。なので、レイカ様が仮に自分が成人した女性だと伝えても、クラスの人々はそれを笑い飛ばすだけですので。」
残酷にも、私の予想は思い違いでもなかった。さらに、クラスの人々は私のことを『レイカ』としてではなく、同年齢の男子である『ケイ』として見てくるらしい。最悪でしか無い。予想の斜め上の現象を淡々と伝えてくるこの男は、私から見れば悪魔以外の何物でもなかった。
レイカ「そんな…」
黒服「もうすぐ始業のチャイムが鳴ります。早くランドセルを持って教室へ移動して下さい。」
レイカ「きゃあっ! いきなり何!?」
黒服「レイカ様自らが移動しなかったため、もうすぐ始業時刻なため私が教室へと連れて行きます。」
よなよなとへたり込む私を、この黒服の男はいきなり持ち上げた。軽くなった私は簡単に持ち上げられ保健室の外へと追いやられる。時間だからという理由で教室へと早足で連れて行く黒服は、まるで自我のないアンドロイドのようだ。
レイカ「わかった! 自分で行くから!」
黒服「わかりました。では一日児童体験会をお楽しみ下さい。」
私が大人しく黒服の言うとおりにすると、黒服はあっさりと私を下ろして立ち去った。気づけば4年2組の教室のすぐ前で、私は校帽を被りランドセルを背負っていた。手には体操着が握られ、いつの間にか足には上履きを履かされている。どうやら教室に入るしか無いだろう。
こうして私は、人生初めての小学生男児としての生活を体験することになった。
キーンコーンカーンコーン
先生「起立! 礼!」
生徒達「よろしくおねがいしま〜す!」
こうして久しぶりの、『ケイ』としての小学校生活が始まった。一時間目は算数で、割り算の問題をひたすら解くらしい。割り算の授業だなんて久しぶりだなと、私は少し懐かしく思う。
先生「はい、時間です。 では最初はボーッとしていたケイ君、この問題を解いてみて。」
どうやら問題を解く時間は終わったらしい。ボーッとしていた私は先生から名指しされて、黒板の問題を解くように言われた。算数の問題なんて楽勝だろと黒板を見る。そこには複雑な模様が書かれていた。
おかしい。黒板に書かれているその問題は「12÷6=?」というシンプルな問題で、その問題が簡単に解くことが出来たという記憶も残っている。でもその問題をどうやって解くのか考えた瞬間に、頭の中はもやに包まれてしまう。「÷」という記号もわかるはずなのに、まるで絵のように見えてしまう。
先生「ケイ君?」
レイカ「えっとぉ… わかりません…」
私がなかなか答えられないのを見て、クラスにいる人はジロジロと私の姿を見る。私は子供特有の間延びした声で分からないと言うしかなかった。
ギャハハハハハハ…
先生「ケイ君分からなかったの? じゃあ外を向くんじゃなくてちゃんと授業に集中してね。」
先生「じゃあ他の人で分かる人はいる?」
すると教室の中からたちまち「2!」という声が響く。私は答えはわかっていても、なぜ2となるかはどうしてもわからない。慌てて教科書を見ると、簡単なはずのその内容はどんな本よりも難しく感じた。
慌てて黒板の内容を書き取ろうと思っても、いつもより遥かに遅いペースでしか書けない。やっと一行書き終わったら、黒板の内容は全て消されて、ノートに書いた内容もぐちゃぐちゃで何が書いてあるのかわからない。細長く器用だったはずの私の腕は、太く丸く茶色で不器用な男児の指となっていたのだ。
本来なら私より遥かに学力が低いはずの子供達に笑われて、先生がそんな私を同情のこもった声で諭す。それに頷くことしか出来ない私。そして小学校で習うはずの授業も満足に吸収することが出来ない。そんな「落ちこぼれ」となった私は、どこまでも醜いものであった。
やっと午前中の授業が終わり、昼休みに入る。
いつも腹八分目に抑えていた私だったが、今日のの給食の時間中は腹八分目どころかこの体の限界ギリギリまで食べてしまった。育ち盛りの少年の食欲は凄まじく、三時間目が終わる頃にはお腹がなって、給食の時間中は何杯もおかわりしてしまった。反対に野菜はいつもよりも何倍も苦く感じて、結局最後まで食べることは出来なかった。食の好みも単純になって、食べ方も下品になってしまった。
男子A「ケイ! トイレ行こうぜ!」
レイカ「うん…」
そういえばこの体になってからトイレに行ったことがないし、さっき食べすぎたせいでお腹も痛い。私はクラスメートの男子とトイレに行くことにした。生まれて初めて男子トイレの中を覗く。そこには個室の他に、おしっこ臭い小便器があった。
男子A「お前うんこするのか? うんこせーじんだ!」
途端にとても恥ずかしい気持ちになる。そういえば私がいたときも、小学校の中でうんちをしたらうんこ星人と言われてたけど、自分のことを「うんこ星人」と呼ばれてしまうことが、とても屈辱だと思えてしまうのだ。
レイカ「ち、ちげーし! おしっこ行くだけだし!」
私は慌てて否定する。うんこ星人と呼ばれるのを必死で否定する私の姿は、本物の男児のようであった。
結局私は慣れない小便器でおしっこをすることになった。ズボンとパンツを下げると、そこにはつぼみのようなおちんちんがあった。お腹に力を込めると黄色い液体を流す。そして簡単な刺激でぴょこんと勃ってしまうそれは、女の私からはとても奇妙に思えた。
男子A「あっ! 五時間目体育だ! ケイもはやくおしっこすませろよ!」
私も慌てて教室へ戻る。この学年はまだ男子と女子が一緒に着替えているらしく、女子含めてみんな着替えだしていた。私も慌てて着替え始めるが、今私が着ているのはTシャツと短パンだけだ。一分も待たずに着替え終わるだろう。
Tシャツを脱ぐと簡単に上裸の姿になる。ブラや下着などの衣類をつけなきゃいけない女性と比べて、男児の着替えはとても楽であった。その反面今まで胸を隠していたので、全く何もつけていないまま大勢の前で着替えるのは恥ずかしい。
男子B「ケイ! 何胸隠してるんだよ!」
クラスメートの男子の言う通り、私の胸には何の膨らみもない薄い胸版が広がっているだけだ。白かった肌も日焼けによって色黒となっている。その代わりに股間には今までにない小さな膨らみがある。女性とは程遠い存在だろう。
目の前にはクラスメートの女子が着替えている。その女子は発育が早いようで、もう胸が膨らみ始めてブラも付けていた。その恥ずかしがる様子に私はしばらく目を奪われて、今まで経験したことのない不思議な感情を覚えていた。
ずるっ
レイカ「うわあああっっ!!」
男子C「あーー、ケイのパンツ大きくなってる!!」
いきなり何かが下ろされると、私はパンツ一丁の姿となっていた。しかもそのパンツは大きくなっていて、それに何だかテントが張ってあるみたいだ。
レイカ「いきなり何すんだよ!!」
男子C「だってケイ、近くの女子の着替えをじっと見ていたんだもん〜」
レイカ「み、みてないっ!」
私は必死で否定することしか出来なかった。もう男子の口調がとか関係がない。私はいつの間にか、同性だったはずの女子の着替えに夢中で、そして欲情していたのだ。おちんちんが大きくなったということはそういうことなのだろう。パンツの中のおちんちんはまだ勃起したままで、私の心臓の鼓動はとくんとくんと高鳴っていたのだ。私は自分が性欲に支配された「男児」と名実ともになってしまったのだ。
結局男子の口調はその後も直ることはなく、下校途中も道行く女性に何度か勃起してしまった。算数の問題はまだわからない。初めての学校は、私を本物の「男児」と変えてゆくものであった。私は悶々とした思いで自宅に帰った。
バタン
レイカ「ただいま…」
ケイ「ああっ♡ 気持ち良い♡♡」
黒服「おぉぅ… すっかりセックスのやり方分かってきたじゃねえか。」
レイカ「え…」
そこには衝撃的な光景が広がっていた。私を案内した黒服が私の姿となったケイ君とセックスをして、ケイ君はまるで本物の女性のように喘いでいる。私はしばらくこの現実離れした光景にぽかんとしていた。
ケイ「あら、お帰り『ケイ』君。」
黒服「お邪魔しています『ケイ』様。」
ケイ君と黒服はまるでセックスを何も思っていないかのように、帰ってきた私に挨拶をする。しかも二人共私のことを『レイカ』としてではなく『ケイ』として扱ってくる。最初は戸惑いが勝っていたが、次第に自分に対するぞんざいな扱いに怒りが湧いてくる。
レイカ「人の家で何やってんだよっ!」
私はついに堪忍袋の緒が切れて二人に怒るが、姿も口調も『ケイ』君の男児のものとなってしまったそれはかんしゃくを起こした男児のようで、声も甲高く大人を怯えさせるものではなかった。
ケイ「だってあなた『ケイ』君じゃん。」
レイカ「な、何言ってるんだよ! お前こそケイじゃん!」
ケイ「だって私は大きいおっぱいだってついてるし、貴方についている小さいおちんちんだってない。それに貴方は淑やかな女性の口調ではなく、ガキっぽい男児の口調でしょう。」
私の言葉を、ケイ君はさも私が間違っているかのように、私へ諭すように言ってくる。ケイ君に言われた通り私は既に口調も完全に子供っぽいケイくんのものへとなっており、それは子供をなだめる母親のようにも見えた。
レイカ「でもオレとお前は入れかわって…」
ケイ「んむっ♡」
レイカ「んんっ んんんんんっっっ♡♡♡」
いきなりケイ君は身をかがめて、私の口へ下を押し込む。ディープキスだ。それは数十秒も私の小さく赤い舌と濃厚に絡み合い、これが朝まで男の子だったのかを疑うくらい私のやり方とそっくりであった。
ケイ「ぷはっ… どうだった?」
レイカ「はぁ… はぁ… いきなり何すんだよ…」
まるで永遠のように感じたディープキスが終わった。私はそのキスでもうヘトヘトだったが、股間が突っ張っているような気がする。そしていきなりその圧迫感はなくなって、股間だけではなく下半身全体が涼しくなった気がする。
それは当然だった。私は下を見ると、下半身に身に着けてあったズボンとパンツが下ろされていた。昼におしっこしたときはふにゃふにゃだった私のおちんちんは今まで見たこともない程に膨らみ、その先端からは透明な汁を垂らしていた。
ケイ「キスしただけでこうなっちゃうなんて。性にウブな男の子なのね。」
レイカ「だから違…」
ケイ「つんっ♡」
レイカ「んひゃああぁぁぁぁ♡♡」
私の言葉は最後まで言えなかった。ケイ君が私の大きくなったおちんちんをつんと突くと、私の脳には今まで経験したことのないような快感が流れてくる。それは女の子の長く続く快感ではなく、男の子の短く激しい快感であった。
ケイ「つんっ つんっ」
レイカ「やめてぇ♡ オレおかしくなっちゃうっ♡」
私は初めての男の子の快感に涙が出てしまい、半べそを書きながらケイ君に自分のおちんちんを突くのをやめるという情けない懇願をしていた。ケイ君はそれを面白がったのか、指で突くペースをどんどん速くしてくる。
ケイ「はむっ」
レイカ「あああっ♡」
すると今度はケイ君は私のおちんちんを自分の口でくわえたのだ。口の中のとろけるような暖かさと、自分のおちんちんを舐められているこの気持ちよさに、私はもう脳がとろけてしまいそうだった。
私の子供サイズのおちんちんはその口の中にすっぽり入り、しゃぶられて、暖かい舌で舐められて、上下にピストンされる。そしてだんだん私の股間から何かがこみ上げてくる。それは私が絶対に経験しないはずで、また絶対に味わいたくないものだ。
レイカ「やだっ… ううっ♡ オレ出ちゃうっ♡♡」
そして私の中からものすごい電流が流れるような気がして、私のおちんちんが辛うじてせき止めていたものが耐えきれずに出てくる。それは金玉からおちんちんに来て、おちんちんの中の尿道を通って、そして…
レイカ「いやあっっ♡♡ オレ射精しゅるうううぅぅぅぅぅ♡♡♡♡」
どぷっ どぷどぷっっ
情けない子供の声と、間抜けな射精音が響き渡った。ケイ君は満足したように、その女性らしい美しい笑顔を浮かべた。
レイカ「はぁ… はぁ…」
ケイ「気持ち良かったね。『ケイ』君♡」
はっと私は我に返った。そうだ。私はレイカという成人した女性で、小学四年生の男子と体を入れ替えられて…
レイカ「何すんだよ! オレの体を返せ!」
そうだ! 目の前のレイカお姉さんが私の体を取ったんだ! 早く取り返さないと!
ケイ「じゃあそれを証明できるの?」
レイカ「えっ… 証明って…」
するとレイカお姉さんはそのことを証明しろと言ってきた。そんなの簡単だ。それは私はレイカお姉さんで、レイカお姉さんが私の体を取って、
ケイ「そんなのは証明とは言わないわ。私だってレイカの記憶はあるもの。」
じゃあレイカお姉さんもレイカお姉さんの記憶があるということだ。それじゃあそれはレイカお姉さんそのものじゃないの?
レイカ「あれ? レイカお姉さんが二人…?」
私はワケがわからなくなってきた。私もレイカお姉さんもレイカお姉さんの記憶があるならそれはどっちもレイカお姉さんじゃないの?
ケイ「それに私の方がレイカお姉さんという証拠はあるわ。だって私は大人の女性の体をしていて、貴方は男の子の体でしょ。」
ケイ「いかにもやんちゃそうな口調の男子が自分が元大人の女性って言ったら、貴方も信じられないでしょ。しかも入れ替わりみたいな超常現象なんて。」
レイカ「ううっ…」
そういえばそうだ。私は「やんちゃそうな口調の男子」だった。レイカお姉さんは大人の女性だし、口調ももっと淑やかだ。私みたいなやんちゃな男の子とは違うんだ。私は自分がレイカお姉さんだと思ったことを後悔し始めた。
ケイ「せいぜいガキの妄想ってあしらわれるのが関の山よ。しかも自分の彼氏を侮辱されて。下手したら不法侵入で捕まえられるかもね。」
レイカ「うぅっ… ごめんなさい…」
しかもそんな「ガキの妄想」を「レイカお姉さんの彼氏」の黒服の前でして、「レイカお姉さんの自宅」に「勝手に入って」するなんて、私はなんて凶悪犯罪者だったんだろう。私はそう思うと自分への後悔が出てきて、自然とレイカお姉さんの前で謝ってしまう。
ケイ「じゃあお詫びの印に、自分が『ケイ』君だと認めて。それで許してあげるわ。」
そうだ。早く自分がケイだと認めないと。
レイカ改めケイ「ごめんなさい! オレはケイです! やんちゃな口調の男子なのに自分のことをレイカおねえさんって言ってごめんなさい!」
そうだ。私、いやオレはケイなんだ!
なんで今まで自分のことをレイカお姉さんだと思っていたんだろう。オレはそれがわけわからなかった。
こうしてオレはレイカお姉さんの家から「元の」家に帰った。さいしょはなぜか自分の家がどこにあるかわからなかったが、いつの間にか自分の家へと戻ることが出来た。よくよく考えれば「まい日住んでいる」家の場所がわからないなんて、そんなバカげた話ないだろう。「いつも見ている」お父さんもお母さんもさいしょは知らない人のように感じてしまったが、すぐに自分がおかしいことに気づいた。
ゴールデンウィークが明けたら「いつものように」登校して先生のじゅぎょうを受ける。オレはクラスの中でも「ベンキョーができない」から、じゅぎょうについていくだけで必死だ。だけどさいきんは体育の着がえのときにとなりの女子の体を見れるから、オレはそれを楽しみにしていた。
そして家に帰ったら、「一日ジドウ体験会」という知らないプリントがあった。オレは迷わずゴミ箱に捨てた。