黒目狩り 黒の記憶
🕑 Added 2023-02-17 04:53:30 +0000 UTCオレはアンタが好きだった。
オレを人として接してくれるアンタが。
醜くて、化け物のオレを信じてくれるアンタが。
わかっていた。自分じゃ理解できないようなこの感情が。何一つ伝わらないことを。
アンタに出会えてから世界が変わった。これは本当だ。
誰からも暴力を振るわれなくなった。
自分の部屋が荒らされることも。食事に毒を盛られることも。
人生が生まれて初めて明るく見えたんだ。
オレがはじめてここに来た時、別棟に隔離されていた。
誰もオレを生きているものとして扱ってくれなかった。
本当に辛かった。あの時ほど死にたかったことはないよ。
思い出したくもないね…。
そんな時アンタが来た。
アンタの手がオレの腕を引っ張った。
「ここから逃げよう」…なんて言ってさ?
突然の出来事だった。でもオレは…そんなアンタをすぐに信用してしまった。
生まれて初めてみたものを親だと思い込む雛鳥のように、オレはアンタを勇者だと思ったんだ。
こんなことアンタに言えないだろうな。きっとからかうだろ?
でも本当だ。全部…。オレを助けようとしてくれたその行動が、オレのために何かしてくれたアンタの全てが、夢のようだった。
親友もできた。アンタのおかげで。友という概念を心の底から知ることができたんだ。
今も信じているんだ。アンタはオレの勇者だった。恥ずかしいから、言えねえけど。
ああ、オレの腕を引っ張って……。気づけば手を繋いで。花畑に来たんだ。
黒い花が一面を覆う、そんな場所に。
「綺麗だろ?」ってアンタは笑った。
綺麗だよ。そう答えた。
風になびくその金髪が、とにかく美しかった。
オレは子供の頃からアンタに惚れていたんだな。
ああ、ごめん、こんな姿で生まれて。
笑うことが怖かった。また殴られたら。
でもアンタは否定しなかった。オレの顔を見ても、オレの髪を見ても、何一つ悪い顔をしなかった。
だがアンタのような美しい姿なら、アンタはオレのことをもっと見ていたかもしれない。
なあ…そうだろ?
アンタは急に行方不明になった。
オレは信じたくなかった。
知っていたんだ…アンタは全部ひとりでやっちまう。
オレを頼りにしたことなんてなかった。
なあ、オレが醜いのか?
オレが化け物だからか?
アンタがいなくなったら、オレは。
エガレェ…頼むからひとりで抱え込まないでくれ。
だからオレはアンタを追いかけようとした。
国外れに行ったかもしれない。
オレはどれだけ星の位置が変わろうと…探し出す。
今度はオレが助けなきゃいけねえんだ。
そう思っていた。
知らない人間がオレの腕を引っ張った。
あの時よりも、痛みと恐怖が伴った。
ああ、そうだ。オレは…化け物なんだ。
違う。化け物にされたんだ。
手足を拘束されて。
見たこともない機械に、何度も打たれた注射器、叫ぶオレに見向きもしないで肌を切り裂いていく人間。
気づいた。魔物はいつもこんな目にあっているということに。
人間が急に憎くなった。「人間」そのものに酷い憎悪を抱くようになっていた。
血肉を抉られる恐怖、過去の出来事の記憶、自分の両親がオレに仕掛けたこと。
今でもオレを縛り続ける。
脳の繊維ひとつひとつに絡みつくように、こびりついて離れない。
オレは死ぬことができなかった。体の細胞が死を拒絶せるようになった。
生きる希望がなかった。だからアンタを探し続けた。それが希望になれたから。
本当は不安だった。親友を既に失っていたから。
不死という縛りを受けているせいで、まわりの死に耐えられなかった。
アンタは…オレを置いていかないだろう?
あのとき伸ばしてくれた腕は、オレのためなんだろう?
オレはまたひとりになるのか?
オレをひとりにしないでくれ!
アンタを襲うものは全てオレが殺す。
目が黒いやつを殺せばいい。そうすれば化け物になった瞬間ぶち殺せばいいし、アンタが化け物に襲われることがなくなるだろう?
それにアンタを襲う人間もいなくなるんだ。
オレをひとりにしなかったアンタをひとりにさせたくないんだ。
……オレを、信じてくれよ。
もう、何も失いたくないんだ…。
こうなることくらい、わかっていた。
こんな世界で、強く生き続けていたアンタが、本当に立派だった。立派すぎた。
自分がどのくらいの間探し続けているのかわからなくなっていた。
何故人を殺しているのかわからなくなった。
せめて、一度だけ話しておきたかった。
どうしてだろう、涙が止まらない。
人のことに、こんなに泣くことは今までなかったのに。
心に穴が空いた気分だ。
オレは何を目指して生きていけばいい?
この感覚はなんだろう。悲しい、わけではない。
何かを心から奪われて、ぐちゃぐちゃに潰されて、あぁ……くそっ、オレはアンタのために何か出来ていたのか?
死ねない体で、アンタを追うこともできない。
自分の銃を自分に向けることすら怖い。
オレは……何も出来なかった。
だめだよな、結局自分の鎖が、枷が、外れなかったんだ。
この感情をどこにぶつければいいんだ?
考えても無駄だ。わかっている。だがオレはそうでもしないと、自分の感情に潰される気がする。
呪いに体を乗っ取られる。姿までもが、化け物になってしまう。
オレはアンタに依存していた。あの時からずっと依存し続けていたんだ。
悔しいよ、そりゃそうだ。命に限りがあることを、どこかで忘れていたんだ。
オレは……。
「どうしたんだ?大丈夫か?」
探し続けて、アンタの子に出会ったよ。
無駄な足掻きだろう。だがオレにとっては生きる希望を見つけただけにすぎない。
見間違えるほど瓜二つなんだ。
だから羨ましかった。あの美しい容姿を引き継いだアンタが。
オレは過去に戻ったのかと思った。
いっそのこと、アンタの姿をエガとして想い続けたほうがよかったのかもな。
…。
アンタの子は…さすがエガの子だって思えるよ。
魔物の存在も否定しないし、何より…オレのことを攻撃しなかった。
オレと同じ瞳をもつ目の前の男は、ただこちらを不安げに見つめていた。
「何で泣いているんだ?どこか痛いのか…?」
「……なにもないさ」
ああ、心が痛くてたまらないんだ。
アンタは……
アンタはオレを捨てないよな?
Comments
テンポ良く読み進められて、風景、人物の表情まで想像しながらでないと もったいない(私だけかもw)文章と、書籍の形態だとすれば、表紙のイラスト に相当してるタイトルの上の絵(内容が気になって是が非でも読みたくなる 素敵なイラスト)なので、小説の投稿に慣れていらっしゃると思ったら、 『小説は苦手』のプチ暴露!驚きの事実です! 妄想が嬉しい・・・妄想好きの私にとって夢の様な嬉しいお言葉に感謝です! ご期待に応えらる様な妄想コメント、質問させていただきます! オグエフちゃん、三つ編みエガちゃんの話も読ませていただきます。 じっくり時間を掛けて、あれこれ設定を確認しながら読むのが好きなので、 時間はかかりますけど必ずコメントします。ちなみに三つ編みエガ君の笑顔見て 『えぇっ-!エガ君笑ってる!何事?』って、早くも妄想が始まってます~w(^^)
快眠クジラさんはいつも自創作を想像してくれるので本当に嬉しいです…創作クラスタとしては妄想とか本当に嬉しくて、是非聞かせて欲しいところがあります!間違っていてもいいので、何かしら聞かせて欲しいところがあります…質問とかそういう想像、是非メッセージボックス(マシュマロ)などに入れて教えて欲しいです! 小説、実は苦手なのでそう言ってもらえると嬉しいです…励みになります! コメントありがとうございました!いつも本当に助かってます…
キャラ紹介のガル君見て、エガ母からもらった髪を結わく赤紐を使うほど エガ母を好きで、エガ君と付き合う関係なのは理解してましたが、母親に似て るだけで依存するがどうにも?でしたけど、小説読んでスッキリしました。 『その辺の詳細はご想像にお任せです』も好きですけど、ある程度ガイドラン的 なものがあると、妄想のベース部分が確立できて、そこから別の妄想が生まれ やすくなる(私の脳内活動の話なのでわかりにくいですよね!すみません!)のが 楽しくて嬉しいです~! 今作もzyusouさんの情景表現力に感動しました。黒い花一目の花畑に佇むエガ母の 姿が想像できる『風になびくその金髪が、とにかく美しかった。』や、『どれだけ 星の位置が変わろうと』で、不死性を持つ者でないと有り得ない膨大な時間の経過が イメージできて、作品の凄みや迫力に圧倒されてしまいます。 ガル君がエガ母、エガ君がゼラちゃんを、お互い大切な人を失った同志で 依存しあう2人の関係が再認識できて嬉しい小説ありがとうございました(^^)