第一話 第1章 目覚めの草原(めざめのそうげん)それでも世界は回っている-OZ-
🕑 Added 2025-05-27 08:48:04 +0000 UTC
第1話「目覚めの草原」
──ざわざわ。
風が草を撫でる音で、ドロシーは目を覚ました。
見上げた空は、どこまでも青かった。けれど、何かが違う。空気の色、風の匂い──全部が、ほんの少しだけ現実離れしている。
「……ここ、どこ?」
イタチの獣人であるドロシーの耳がぴくりと動く。
背中に感じる土の冷たさ、手のひらにまとわりつく草の感触──すべてが妙に生々しい。
ゆっくりと体を起こし、自分の姿を確認する。
毛並みはベージュと焦げ茶のツートン。しっぽは柔らかく、少しふくらんでいる。
夢ではない。これは、確かに「現実」だ。
「……魔法の嵐?」
そう、昨晩。村の空に渦巻いていたあの“光のうねり”を、彼は確かに見ていた。
気づいたときには、ここにいた。
「お父さん……」
つぶやいたその名前は、草の波にかき消される。
遠くには、崩れた石塔のようなものが見える。道はなく、建物もない。けれど草原の真ん中に、ひとつだけぽつんと置かれた「案内板」があった。
“ようこそ、オズへ。”
木の板に、くすんだ金の文字。
ドロシーはそれを、ただ呆然と見つめた。
──知らない名前。知らない世界。
だけど、ここに来てしまった。
「……どうして、ぼくなんだろ」
答えは風の中。
小さなイタチの獣人は、その世界でたったひとり、最初の一歩を踏み出した。