第1章 第二話
🕑 Added 2025-05-27 08:51:40 +0000 UTC
第1章 目覚めの草原
第二話「静かな丘の看板」
草原を歩くと、風が毛並みに絡んだ。
どこまでも続く金色の大地は、見渡す限り生き物の気配がない。
──それでも、進まなきゃ。
足元の石を踏むたび、カチャ、と音が鳴る。
イタチ獣人のドロシーは、耳を伏せながらそっと歩みを進めた。
すると、丘の上に何かが立っているのが見えた。
近づいていくと、それは木製の古びた立て看板だった。
板は風雨にさらされて灰色に変色しており、文字の一部は欠けている。
けれど、中央にはまだ読める金色の文字が残っていた。
「ようこそ オズへ」
──オズ?
聞いたことのない地名。でも、不思議と懐かしい響きがした。
ドロシーは看板に手を触れた。
冷たい木の感触。だが、誰かがここにこれを立てたという事実が、彼の胸をほんの少しだけ軽くした。
「……誰か、いるんだろうか」
風が吹いた。
草原の向こうから、かすかに鐘の音のようなものが聞こえた気がした。
ドロシーは振り返らずに、歩き出した。
──まだひとり。けれど、もう、完全な孤独ではない気がした。