~アマチュアプロレス~ 『いいわ。その視線、全部もらうから♡』
🕑 Added 2025-11-04 01:36:18 +0000 UTC
※知らない内にシリーズ作になってました(^^♪
過去作を読み漁って頂けたら幸いです。
~アマチュアプロレス~ 『夫婦タッグ誕生』
~アマチュアプロレス~ 『人妻レスラー聡美の“プロレス♡”』
~アマチュアプロレス~ 『最高の試合♡ そして苦悩』
https://www.pixiv.net/novel/series/12790193
~本編~
江田はしばらく聡美の顔を見つめていたが、やがて優しく微笑んだ。
「私はね、プロレスが好きなんです。ただ、それだけです。プロレスが楽しい。だからやる。それで、私は十分なんですよ。」
穏やかな口調で、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「例え脚光を浴びなくても、観客がいなくても、私はプロレスを続けます。好きだからです。だからこうやって、この練習場を開いて、みんなと一緒にプロレスをやっているんです。」
励ますような笑顔を向ける江田。
聡美はその言葉に頷き、無理に笑みを作って返事をした。
「……はい、そうですね。」
だが、その表情からは明らかに納得していないことが伝わった。悔しさが滲み出ている。
・・・・・・・・・・。
――それからさらに数ヶ月が経ち、初めての試合からはもう一年が経とうとしていた。
二人は変わらず練習場に通い、練習を続けていた。
光明は相変わらず楽しそうだった。技を受け、投げ、受け身を取る。そのたびに笑い声をあげ、仲間たちとも和気あいあいとした雰囲気でプロレスを楽しんでいた。
しかし、聡美は違った。
技をかけられても、受けても、どこか気持ちが入っていない。笑顔もない。ただ、義務のように動きを繰り返しているだけだった。
そんな彼女の様子を見かねて、光明が声をかけた。
「お前、最近あんまりやる気ない感じだけど……大丈夫か?」
すると、聡美は不貞腐れたように答えた。
「……いいでしょ。別に。」
その投げやりな態度に、光明は苦笑しながら肩をすくめる。
「おいおい、なんだよその言い方。俺、なんか気に障ること言ったか?」
ユーモアを交えて話しかけようとしたその瞬間、聡美は苛立ったように声を荒げた。
「試合もないのに、こんな意味ないことして……何が楽しいの?」
その言葉に、光明は少し驚いたように聡美を見た。
「意味ないことって……。」
「だって、そうでしょ? いくら練習しても、もう試合なんて出来ないし。だったら、こんなの続けてても無駄じゃない。」
聡美の声には、焦りと苛立ちが混じっていた。
光明はしばらく彼女を見つめたあと、落ち着いた口調で言った。
「そもそもさ、俺たち、試合がしたくてここに来たわけじゃないだろ? 俺はただ、新しい趣味を探してて、たまたまたどり着いたのがここだった。それで、楽しいから続けてる。それだけで、今でも十分じゃないか?」
「じゃあ、試合なんてしたくないって言うの!?」
聡美は光明に噛みつくように言った。
光明は少し困ったように頭をかきながら、それでも笑って言う。
「いや、試合は楽しかったよ。でもさ、試合ならほら、練習場でもできるじゃないか。」
「……っ!」
その呑気な返答に、聡美の怒りが爆発した。
「そんなの、全然違う! 本物の試合と、こんな練習でやるのとじゃ、全然違うじゃない!」
「まあ、そりゃ違うけど……」
「もういい、今日は帰る!」
そう言い捨てると、聡美は乱暴にバッグをつかみ、練習場を出て行こうとする。
仲間たちは驚いたように顔を見合わせ、心配そうに声をかけた。
「聡美ちゃん、大丈夫?」
「何かあったの?」
しかし、聡美は振り返らず、そのまま練習場を後にした。
光明は小さくため息をつきながら、扉が閉まるのを見届けた。
仲間たちはそんな彼の様子を見て、気遣うように声をかけるのだった。
・・・・・・・・・・。
それからしばらくして、ある日――
江田が、大学のプロレス研究会の学生たちと試合をすることになった。大学の一角を一時的に一般開放し、小規模ながらもリングを設置し、一般の観客も少しだけ見られるようになっていた。
光明と聡美も、江田の試合を見にその会場へと足を運んだ。
客席には学生たちがちらほらと座り、一般の観客も数人といったところ。決して大きな会場ではないが、久しぶりにリングのある空間に足を踏み入れると、それだけで心が少し高ぶるような気がした。
「……なんか、懐かしいな。」
光明がぽつりと呟く。聡美も、どこか遠い目をしながら頷いた。
そんな中、プロレス研究会の学生たちがリングに上がり、試合を始める。彼らは真剣に取り組んでいるが、動きはどこかぎこちなく、技の迫力も足りない。
「……なんだ、大したことないなー!」
光明は肩をすくめ、笑いながら軽口を叩いた。
しかし、聡美は冷静な目でリングを見つめながら、小さく息を吐いた。
「……でも、実際、私たちもあんなもんでしょ。むしろ、私たちの方が下手かもよ。」
光明は一瞬、返す言葉に詰まったが、やがて苦笑しながら頷いた。
「……確かに。」
学生たちは懸命に技を掛け合っていたが、当然ながら観客の反応は薄かった。ただの素人のプロレス。技の迫力もなく、緊張感もない。
(やっぱり、私たちと同じだ……。)
そんなことを考えていたとき、場内のアナウンスが流れた。
「本日のゲスト! 江田選手の登場です!」
その瞬間、今まで退屈そうにしていた観客たちの目が一気にリングに向いた。
江田がゆっくりとリングに向かって歩いてくる。
その体格、風格――完全にレスラーそのものだった。
光明も思わず目を見張る。
「やっぱ、江田さんは……すげぇな。」
リングに上がった江田は、大学生たちと軽く握手を交わした後、試合が始まった。
そして、江田が技を繰り出す。
――凄まじい。
学生たちが同じようにやっていた技と、まったく同じ技のはずなのに、江田がやるとまるで別物だった。ひとつひとつの動きにキレがあり、力強さがあり、受ける側の体が宙を舞う。単なる投げ技でも、まるで大技のような迫力があった。
「……これが、本物なのかなぁ……。」
聡美は、息をのんだ。
それほどまでに、江田のプロレスは圧倒的だった。
しかし――
最初こそ盛り上がっていた観客たちが、次第に席を立ち始める。
「……え?」
聡美は思わず周囲を見回した。
(なんで? なんでこんなすごいのに、みんな興味なさそうに帰っていくの?)
その疑問に答えるかのように、近くの学生の声が耳に入った。
「……なんか、おっさんが裸で汗かいてるの見てもつまんねーし、他行こうぜ。」
「だな、メシでも食いに行くか。」
クスクスと笑いながら、彼らは去っていく。
聡美は愕然とした。
(……こんなにすごいのに……。)
(なんでみんな、何も感じないの? なんで、興味なさそうにするの?)
理解できなかった。
いや――理解したくなかった。
この迫力、この技術、この完成度。自分たちがどれだけ頑張っても到底及ばないレベルの試合。それなのに、観客は何も感じず、興味を失って去っていく。
何かが心に突き刺さる。
結局、最後までリングの前に残ったのは、聡美と光明、そして数人の学生たちだけだった。
リングの上の江田は、特に気にした様子もなく、静かに試合を終えた。
しかし、聡美の胸の中には、どうしようもないモヤモヤとした感情が渦巻いていた。
・・・・・・・・・・。
試合が終わり、リングを降りた江田に、光明と聡美は駆け寄った。
「江田さん、お疲れさまでした!」
「いやぁ、本当にすごかったです! まるでプロみたいでしたよ!」
光明が笑顔で声をかけると、江田は少し照れたように微笑んだ。
「ありがとうございます。でも、やっぱり体が動かなくなってきましたね。」
冗談めかして言いながら、江田は軽く肩を回した。
「それより、お二人に報告があります。」
江田は、どこか嬉しそうな表情を浮かべながら続けた。
「実は、試合の予定をいただきました!」
「えっ!?」
聡美と光明は同時に驚きの声を上げた。
「試合……本当ですか!?」
「はい。この大学のプロレス研究会の子たちと一緒に、栃木のイベント会場で試合をする話が決まりました。」
「すごいじゃないですか!」
光明が満面の笑みで聡美の肩を叩く。
「よかったな、聡美!」
「……本当に……!」
聡美も、久しぶりの試合の機会に、心が躍るのを感じた。自然と頬が緩む。
そのとき、近くにいた大学生たちが二人に向かって頭を下げた。
「よろしくお願いします!」
「一緒に頑張りましょう!」
彼らの明るい声に、聡美は少し身が引き締まる思いだった。しかし、すぐに彼女の胸に一つの不安がよぎる。
「……でも、私たち、江田さんみたいなすごいことができません。そんな自分たちが試合をやっても、何も盛り上げられないんじゃないかって……。」
そう呟くと、江田は一瞬驚いたような顔をしたが、次の瞬間、くすっと笑い出した。
「いやいや、私は一度も試合で盛り上がったことなんてありませんよ。」
「え……?」
聡美が目を丸くすると、大学生たちも笑いながら言った。
「プロレスなんて、盛り上がらないのが当たり前ですよ!」
「僕たちなんて、毎回身内だけが楽しんでる感じですし!」
「そうそう、でも、それでいいんです!」
彼らの無邪気な笑顔に、聡美は思わず言葉を失った。
(……盛り上がらないのが、当たり前……?)
それなのに、彼らは楽しそうにプロレスを続けている。江田も、同じようにずっとプロレスを続けている。
(でも…私は…)
「さて、お二人にも正式にお聞きします。」
江田は改めて二人に向き直り、真剣な目で尋ねた。
「試合に出場する意思はありますか?」
光明は、迷いなく聡美の方を見て、にっと笑った。
「聡美、やるよな?」
聡美は、一瞬だけ迷うように口をつぐんだ。だが、すぐに顔を上げ、力強く答えた。
「……うん。やりたいです!」
その瞬間、久しぶりに胸の奥が熱くなるのを感じた。
・・・・・・・・・・。
二か月後の試合に向けて――
試合の話が決まってから、光明と聡美は練習に励んでいた。
久しぶりの試合。今度こそ、盛り上げたい――。
そんな中で、聡美の心には、ある思いが生まれていた。
(江田さんも、大学生の子たちも、あんなに楽しそうにプロレスをやってた……。)
プロレスは、盛り上がらなくても、ただ楽しくやるものなのかもしれない。
でも、もし次の試合で盛り上げることができたら?
(もし、次の試合が成功して、好評だったら……。)
それが大学生の子たちにも伝われば、彼らだって盛り上がる試合の興奮を味わえるはず。
(そうすれば、次のイベントにも呼んでもらえるかもしれない……。)
(そして、自分たち夫婦だけじゃなく、この団体の人たちで試合をしたり、もっといろんなことができる……。)
そのためには、何としても次の試合を盛り上げたい。
聡美は、今までとは違う強い意志を持って、練習に取り組むようになった。
そんなある日、光明は練習場で仲間の永野と技の受け方について話していた。
永野は27歳のIT企業の会社員。体格は細く、筋肉質なタイプではないため、光明や聡美以上に素人っぽさが目立つ。だが、彼はプロレスを愛していた。
リングの上で光明が受け身を取ると、ミットを持って見ていた永野が声をかける。
「光明さん、その技を受けるとき、もうちょっとリアクション抑えたほうがいいですよ。」
光明は驚いたように永野を見る。
「え? でも、リアクションって大きいほうがいいんじゃないのか?」
「もちろん、派手に見せるのは大事です。でも、その技が試合の流れの中でどういう役割を持ってるかを考えないと、ただ受けるだけじゃ、後の盛り上がりが弱くなっちゃうんです。」
永野は理論的に説明しながら、実際に軽く技を受ける動きをしてみせた。
「たとえば、序盤はちょっと抑えて、技を受けてるのにまだ耐えてる感じを出す。でも、終盤に向かっていくにつれて、だんだんリアクションを大きくしていくと、観客が盛り上がるポイントを作れるんですよ。」
「なるほど……。」
光明は腕を組みながら、永野の説明をかみしめる。
練習中、光明と永野が話している様子を見て、聡美が近づいてきた。
「何話してるの?」
光明はニヤリと笑いながら、親指で永野を指した。
「こいつから、試合を盛り上げるコツを聞いてるんだよ。」
「へぇ~。永野さんなりに、何か良いアイデアがあるんですか?」
聡美が興味深そうに尋ねると、永野は少し照れくさそうにしながらも、理論的に答えた。
「ええ。たとえば、各試合の定番の流れだったり、海外のWWEなんかを参考にしたりして……。」
聡美は「WWE?」と首をかしげる。プロレスの世界的な団体ということは知っているが、具体的にどう参考になるのかまではピンとこなかった。
すると、近くで話を聞いていた練習仲間の一人が笑いながら口を挟んだ。
「永野は、生粋のプロレスオタクだからな!」
「そうそう! 試合の流れから、選手の細かい動きまで、何でも知ってるんだから!」
他の仲間たちも便乗して盛り上がる。永野は少し恥ずかしそうに笑いながら、それでも誇らしげに言った。
「プロレスは、ただの格闘技じゃないですからね! いかに観客を引き込むか、どう魅せるかが大事なんですよ!」
熱く語る永野の姿を見て、聡美は「なるほど……」と呟いた。
(プロレスの「魅せる」部分……私には、それができているんだろうか……?)
そんな考えが頭をよぎる。
練習が終わり、仲間たちはそれぞれ帰路につき始めていた。
光明もバッグを肩にかけながら、聡美に声をかける。
「聡美、帰ろう。」
しかし、聡美はその場に残ったまま、考え込むような表情を浮かべていた。
「……ちょっと試合のことで考えてることがあって。先に帰ってて。」
光明は少し驚いたように彼女を見たが、すぐに優しく微笑んだ。
「あんまり考えすぎるなよ。」
そう言い残し、光明は練習場を後にした。
そして、場内が静かになったころ――
聡美はそっと永野に近づき、小さな声で話しかけた。
「……ねぇ、永野さん。」
永野は驚いたように振り向く。
「はい?」
聡美は少しだけ息を飲み、真剣な目で永野を見つめた。
「……試合を、盛り上げるには、どうしたらいい?」
その問いに、永野は一瞬目を丸くした後、静かに口を開いた。
永野は少し考えた後、静かに尋ねた。
「今度やる、栃木の大学生との試合のことですか?」
聡美は黙って頷く。
すると、永野は真剣な表情で続けた。
「盛り上げる要素なんて、いくらでもありますよ。でも……どれをやるにしても、スキルが圧倒的に足りません。」
「……やっぱ、そうだよね~。」
聡美は、少し苦笑いしながら受け止めた。自分たちがまだまだ未熟であることは、自覚していたつもりだ。
だが、次の永野の言葉は予想外だった。
「ただ、その中でも、聡美さんがいれば、いくらでも盛り上げられますよ。」
「え……?」
聡美は、まったく意味が分からないという顔をした。
「どういうこと?」
永野は、軽くため息をつきながら、まっすぐ聡美を見つめた。
「……一試合目のとき、なんであんなにレベルの低い試合で、あそこまで盛り上がったのか分からないんですか?」
「え?」
聡美は言葉に詰まる。
「……うーん……私、夢中だったから、あんまり覚えてないというか……全然分かんない。」
「そうですか……。じゃあ、もう少し冷静に考えてみましょう。」
永野はゆっくりと言葉を選びながら説明を始めた。
「まず、男性3人の中に女性が1人いる。 それだけでも、ある程度の興味を惹きます。」
聡美は驚いたように目を見開く。
「それって……そんなに大事なこと?」
「ええ、もちろんです。」
永野は頷き、さらに続ける。
「そして、その女性が、パツパツのコスチュームを着ていた。 それだけで視線は集まりやすくなります。」
「……」
「さらに、試合の中で、男性相手に恥ずかし固めをされ、大股を開かれる。 しかも、その体勢のまま観客に向かっていた。そして、そのとき聡美さんは自然といやらしい声を出していた。」
「……っ!」
聡美は一瞬、息を詰まらせた。
「……あれは、プロレスをやろうとして、盛り上げようと必死で……そんな風に考えたことなかった。」
永野は軽く笑って言う。
「でも、観客はそうは思わないんですよ。」
聡美は少し間を置いたあと、戸惑いながら口を開いた。
「……じゃあ、今度の試合でも、同じようにやったら盛り上がるってこと?」
永野は迷いなく答える。
「間違いなく。」
その即答に、聡美は思わず眉をひそめた。
「それじゃ、ただのスケベなショーじゃない!」
強い口調で言う聡美だったが、永野はあくまで冷静だった。
「プロレスは、ある意味ショーですからね。」
「……!」
聡美は返す言葉が見つからなかった。
「試合の流れ、技の受け方、派手なリアクション。選手同士の因縁やライバル関係……そういったもの全てがシナリオのように構成されていて、それを魅せるショーのような格闘技がプロレスなんですよ。」
永野は淡々と、しかしどこか楽しげに語る。
「確かに、一見するとスケベなショーに見えるかもしれません。でも、それもプロレスの要素のひとつとして捉えて、観客を楽しませることができる。 それがプロレスの魅力じゃないですか?」
聡美は、静かに永野の言葉を噛み締めた。
(……プロレスは、ただ強くなるだけじゃダメ。)
(見せること、魅せることも、同じくらい大事な要素なんだ。)
今まで分かっていたつもりだった。けれど、心のどこかで受け入れきれていなかった。
「……次の試合、絶対に盛り上げて、成功させたい。」
聡美が力強く言うと、永野は軽く頷いて、微笑んだ。
「さっきも言いましたけど、聡美さんがいれば、簡単です。」
「……絶対に?」
聡美は少し驚いたように聞き返した。
永野は、はっきりと答えた。
「絶対に。」
その言葉を聞き、聡美の中で、今までぼんやりとしていたものが明確な形になった。
(魅せることも、プロレスの一部。 それを強く意識しなきゃいけない。)
心の奥で、何かが変わる音がした。
・・・・・・・・・・。
二か月後、栃木――
光明と聡美、そして大学生のレスラー二人とレフリー役の一人。
江田は今回いなかった。
自分たちだけで試合に臨むことに、不安はあったが、それ以上に「今回は絶対に盛り上げる」という決意のほうが強かった。
一行はイベント会場に到着し、控室で試合の準備を進める。
光明はいつも通り、シンプルなレスリングユニフォームを身につける。
そして――
後から出てきた聡美の姿を見て、光明は思わず目を見開いた。
「……え?」
純白のハイレグレオタード。
競泳水着を思わせるタイトなデザインは、聡美の肢体を余すことなく際立たせていた。
生地は薄めに仕立てられており、肌に吸い付くような密着感がある。汗をかけばかくほど、その繊細な繊維が体の起伏をいやらしく浮かび上がらせていくだろう。試合が進むにつれて、汗に濡れた布地がほんのりと透け、身体のラインをより露わにするタイプだ。
腕には白のアームウォーマーを装着し、足元にはしっかりとしたリングシューズ――ブーツタイプのものを履いていた。だが、これはすぐに脱げるような仕様になっている。
光明はしばらく言葉を失ったまま、聡美を見つめた。
「……お前、それ……。」
すると、聡美は少し照れくさそうにしながらも、誇らしげに微笑んだ。
「特注で作ったの。」
光明は思わずゴクリと喉を鳴らし、ためらいながら尋ねた。
「もしかして……その下って……?」
下着はどうなっているのか――。
聡美は、一瞬だけ頬を染めたが、それでも堂々と答えた。
聡美は少しの間、光明を見つめた後――
「……履いてないよ。」
そう、はっきりと答えた。
光明は一瞬、息をのんだ。
「えっ……マジで?」
聡美は恥ずかしそうにしながらも、どこか誇らしげに微笑んだ。
「下着のラインが見えると、逆に興ざめかなって思って。それに、この衣装……生地が薄いから、汗をかいたら、もっと……目立つかも…」
光明は唾を飲み込みながら、複雑な表情を浮かべた。
「……お前、そこまで考えてたのか。」
「うん。だって、今回の試合は絶対に盛り上げるって決めたから。」
聡美の瞳は真剣だった。
光明はそんな彼女の姿を見て、思わず苦笑する。
「……すげぇな、お前。」
「ふふ、光明も、ちゃんと盛り上げてよ?」
光明は、改めて目の前の光景をじっくりと見つめた。
特注の純白ハイレグレオタード。そのタイトな生地が汗ばんだ肌にぴたりと張り付き、柔らかな肉感を際立たせている。特に、胸元のラインは強調され、僅かに浮き出た突起までもが透けるように見えた。
「……いや、すでに若干……」
ごくりと唾を飲み込みながら、冗談めかして呟くと、指先をそっと伸ばし、生地越しに乳首を軽くなぞった。
「んっ……!」
一瞬、びくりと肩が跳ねる。聡美の唇から、思わず甘い吐息が漏れた。その場の空気が一瞬で変わる。
光明はその反応にゾクッとしながら、さらにゆっくりと指を動かした。人差し指と親指で軽く摘まむと、薄布越しにじんわりと熱を帯びた感触が伝わってくる。
「やっ……だ、ダメ……っ」
聡美は小さく喘ぎながら、慌てて光明の手を払いのけた。
「も~! やめてよ!」
羞恥と戸惑いの入り混じった表情で、唇を尖らせる。だが、その瞳にはどこか潤んだ光が宿っていた。
「これから試合なんだから!」
聡美は腕を組み、顔を背けながらも、小さく息を整えるように胸を上下させる。
光明はその様子を見ながら、満足げにニヤリと笑った。
「……いや、すでに。」
その言葉に、聡美は一瞬キョトンとしたが、すぐに意味を悟り、顔を真っ赤にする。
「ちょっ……! なに言ってんのよ!」
思わず光明の腕を軽く叩くが、その仕草すら妙に色っぽい。
「もうっ……知らない!」
プイッと背を向けるが、耳の先まで真っ赤になっている。
光明はそんな彼女の後ろ姿を見ながら、深く息を吐いた。
だが、ここで終わらせるつもりはなかった。
背を向けたまま、ゆっくりと手を伸ばす。狙うのは、ピタリと張り付いた純白の生地越しにくっきりと浮かび上がる、柔らかそうなヒップ。
「ちょ、ちょっと!?」
聡美が肩をすくめるが、光明の手はためらうことなく、彼女の尻肉を包み込んだ。
「んっ……!」
ぐっと指先に吸い付くような弾力を感じながら、軽く揉みしだく。ピタリと密着した生地越しに、しっとりとした熱が伝わってくる。
「も、もうっ……!」
聡美は慌てたように光明の手を振り払おうとするが、完全には払いきれない。
光明はそんな彼女の反応を楽しむように、さらに手のひらを滑らせた。今度は、もっと中心へ――。
「ひゃっ……!」
聡美の体がびくんと震える。指先が、柔らかくふくらんだ秘部のあたりをぷにゅっと押し込むように触れたのだ。純白の生地越しに、じんわりとした感触が広がる。
「ちょ、ちょっと光明……っ! そこは……!」
顔を真っ赤にして抗議するが、光明は意に介さず、ゆっくりと押し込むように指を動かす。
「……試合中にこんな事されたら、どうすんだよ。」
光明の指先が、柔らかな割れ目に沿って上下に動く。そのたび、聡美は体を震わせた。
「あっんっ…!」
「ば、バカぁっ……! 何言ってんのよ……!」
羞恥に耐えきれなくなった聡美は、勢いよく光明を押し返した。
「も、もう……! こんなことしてる場合じゃないでしょ!」
腕を組み、怒ったように光明を睨みつけるが、その頬は熱を帯びて赤く染まっている。
光明は、そんなに気張るなよ、と言わんばかりに肩をすくめた。
「前回みたいに、楽しめばいいんだよ。」
軽い調子のその言葉に、聡美はピクリと反応する。
「……楽しむだけじゃダメなの。」
光明は少し驚いたように眉を上げた。
「そうなの?」
あまり深く考えていない様子の光明に、聡美は真剣な目を向ける。
「前回は偶然うまくいっただけ。今回は、ちゃんと意識して試合を盛り上げるの。」
その言葉には、覚悟のようなものが感じられた。光明はしばらく彼女の顔を見つめ、それから小さく笑った。
「そっか。じゃあ、俺もちゃんとやるよ。」
「当たり前でしょ。」
しっかりとした返事を返し、聡美はくるりと背を向ける。
・・・・・・・・・・。
二人は会場の裏手へと向かい、試合の出番を待つ。
控えスペースには、すでに今日の対戦相手である大学生の男性レスラー二人と、レフェリー役の大学生が来ていた。
「よろしくお願いします!」
聡美と光明が挨拶すると、大学生たちは礼儀正しく頭を下げた。
「こちらこそ、よろしくお願いします!」
試合前の緊張感の中、短いやり取りが交わされる。しかし、次の瞬間――
「……っ!?」
大学生たちの目が揃って大きく見開かれた。
彼らの視線の先にあるのは、聡美のレスリングコスチュームだった。
大学生たちは目の前の光景に息を呑んだ。
そこに立っている聡美の姿は、まるでリング上の女神のようだった。
彼女が纏っているのは、光沢のあるパールホワイトのレスリングレオタード。ハイレグ仕様で、脚の付け根まで滑らかな肌が露わになっている。デザインはシンプルながらも、身体にぴったりと沿うように仕立てられ、わずかに伸縮する生地が動きに合わせて優雅なラインを描く。
背中は大胆に開かれ、しなやかな肩甲骨の形が浮かび上がる。胸元は深すぎず、それでいてしっかりと女性らしい曲線を強調する絶妙なカット。両腕にはエルボーガードを兼ねたフィット感のある白のアームウォーマーが装着され、手首の部分にはシルバーのワンポイントが光る。
そして足元は、膝上までの丈があるレースアップのリングブーツ。彼女のスタイルをより引き立たせていた。
「えっ……」
「す、すごい……」
大学生たちは、一瞬言葉を失った。
ただのスポーツウェアではない。動きやすさと機能性を備えながらも、女性らしい美しさと色気を絶妙に融合させた衣装だった。
彼らの反応に気づいた聡美は、ゆっくりと腰に手を当て、堂々とした笑みを浮かべた。
「そんなに驚く?」
「い、いえ……!」
「すごく……似合ってます!」
照れながらそう言う大学生たちの様子に、光明は苦笑しながら小声で囁いた。
「お前、完全にみんなの意表を突いてるぞ。」
聡美はニヤリと笑った。
「それも、作戦のうち。」
その表情は、すでにリングの向こう側――観客の視線を意識した、プロのファイターのものだった。
試合開始まで、あと数分。
・・・・・・・・・・。
そして、試合の前に行われていたイベントが終了し、いよいよ聡美たちの試合が始まる。
会場のアナウンスが響いた。
「続いてのイベントは、〇〇大学プロレス研究会の皆さんと、アマチュアプロレス団体の対戦です!」
司会進行役がそう告げると、客席からはまばらな拍手が起こった。まだ観客たちは様子を伺っているようで、熱狂というにはほど遠い雰囲気だ。
そんな中、大学生レスラーたちが先に登場し、リングへと歩を進める。続いて、光明と聡美が姿を現した。
聡美の心臓がドクンと跳ねる。
(みんな、どんな反応をするんだろう……?)
いつもと違う特注のコスチューム。その選択が正しかったのか、彼女は無意識のうちに客席を見渡した。
――そして、すぐに気づく。
観客の視線が、一斉に自分へと向けられていることに。
小規模なイベントとはいえ、男性客の割合は多い。その彼らが、一瞬で目の色を変え、興味をそそられたようにこちらを見つめていた。
視線が肌を這うような感覚。それは決して嫌なものではなく、むしろ、狙い通りだった。
(よし……! 掴みはバッチリ!)
心の中で小さくガッツポーズをする。
こうして観客の注目を集めた状態で、5人はリングへと上がった。
中央に並ぶと、大学生チームの一人が一歩前に出て、マイクを手に取る。
「今日は、このような貴重な場で試合をさせていただき、ありがとうございます! 〇〇大学プロレス研究会の代表として、精一杯頑張ります!」
彼は簡潔に、しかし真剣な表情で挨拶をした。会場からは再び小さな拍手が起こる。
続いて、聡美が前に出た。
マイクを持つと、一瞬だけ息を整える。そして、はっきりとした声で語りかけた。
「私たちは夫婦で、休日にアマチュアプロレスを楽しんでいる光明と聡美です。」
そう自己紹介をすると、客席の一部からクスクスとした笑いが起こる。夫婦でプロレス、という意外性に驚いたのかもしれない。
「プロレスは、見て楽しんでもらう格闘技です。ただ強さを競うだけではなく、相手と協力して試合を作り上げるもの。私たちは、皆さんに楽しんでもらえるような試合をお見せしたいと思っています!」
聡美の言葉に、客席がざわめいた。
しかし、そのざわめきの理由は彼女の挨拶だけではない。
むしろ――男たちの視線は、彼女の姿そのものに釘付けになっていた。
リングの中央に立つ聡美の身体を包むのは、競泳水着のようなピタリと密着するハイレグレオタード。薄い生地の純白が、会場のライトを浴びて淡く光を反射する。その素材は柔らかく伸縮性があり、彼女の豊満な体を余すことなく際立たせていた。
ハイレグのカットは深く、しなやかに伸びた太ももがあらわになる。ウエストはきゅっと締まり、ヒップの丸みが引き立つデザイン。生地が肌に吸い付くようにフィットし、胸の膨らみの下からお腹にかけて、なめらかなカーブを際立たせていた。
そして――最大の問題は、その下に何も身につけていないことだった。
「……っ!」
客席のあちこちで、男たちが息を呑む音が響く。
透けているわけではない。だが、光の加減によっては薄布越しに肌の質感すらも感じさせるような、ギリギリの密着感。そして、何よりも「下に何もつけていないのでは?」という疑念を確信に変えさせるような、布地の吸い付き方。
スラリと伸びた太ももの間、ピタリと張り付いた生地の奥にあるはずのものを意識しない方が無理なほど、そのラインはくっきりと浮かび上がっている。
そして、胸元――わずかに体を動かすたび、薄い布の上から柔らかな曲線が押し付けられ、その先端がうっすらと浮かび上がる。
(……完全に見られてるわね。)
男たちは無言で目を見開き、食い入るように彼女を見つめている。
明らかに期待と興奮が入り混じった視線。それはリング上で対峙する大学生たちでさえも例外ではなかった。彼らは試合前の挨拶を交わしたばかりなのに、今や目のやり場に困っている。
「……っ」
一人が何かを言いかけて、視線を逸らした。
それが余計に、「気づいてしまった」ことを如実に表しているようだった。
そして、客席の男たち――彼らの視線は、まるで獲物を見つけた肉食獣のようだった。
聡美はその空気をしっかりと感じ取りながら、ゆっくりとリングの中央へと歩を進める。
そして、観客席に向かって微かに微笑んだ。
(……いいわ。その視線、全部もらうから。)
彼女はすでに、試合の前からこのリングの主役だった。
・・・・・・・・・・続